▼247号
「房総・鹿野山南麓の大ぞうり」
【概略】
村の入り口に道路をまたぐように縄が張られ、ぶら下げられた一足
分の大きなぞうり。道切りの民俗行事は、外から疫病や邪悪なもの
の侵入を防ごうとする。この村にはこんな大きなぞうりをはく強い
大男がいるゾと、悪霊たちを脅かし退散させるのだという。
・千葉県君津市
▼247号
「房総・鹿野山南麓の大ぞうり」
房総半島のほぼ中央・千葉県君津市にある鹿野山。山上の神野寺を
中心としたその名も鹿野山集落があり、上町(うわまち)と下町(し
たまち)の大字に分かれています。
神野寺の四脚門や大桑(おおぐわ)、また住民が継承する「はしご
獅子舞」、「さんちょこ節」などの存在は、東の丘にある日本武尊と
弟橘姫を祭る白鳥神社とともに、歴史と民俗の宝庫になっています。
この近くには日本武尊(やまとたけるのみこと)がこの地の王であ
る阿久留王(あくるおう)を評定したとき、王が泣いて謝ったとい
う伝承から名づけられた鬼泪山(きなだやま)もあります。またそ
の墓が塚になっていまも存在しています。
ある6月のはじめ、王の墓塚を見学後、神野寺前バス停右はす向か
いの道から鹿野山を南下君津市田倉に下りました。
まさに田倉地区本村集落に入るころ、道路をまたぐように縄が張ら
れ、大きなぞうりが一足分ぶら下がっています。その下を通りなが
らぞうりを見上げます。
これは房総に伝わる道切りの民俗行事の時のものという。村の外か
ら疫病や邪悪なものの侵入を防ごうとする一種の呪術で、この村に
はこんな大きなぞうりをはく強い大男がいるゾと、悪霊たちを脅か
し退散させる意味がこもっているのだそうです。
毎年正月に新しく取りつけられるらしく草履は半分腐りかけてはい
るようですが、まだまだご利益があるのか平和そうな家々が続いて
いました。
▼【データ】
【所在地】
・千葉県君津市。JR内房線佐貫町駅からバス30分、歩いて30分
で鹿野山、歩いて2時間で田倉本村集落。
【位置】
・田倉本村:北緯35度14分16.18秒、東経139度57分23.4秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「鬼泪山(横須賀)」
【山行】
・某年6月1日(木・晴れ)探訪
【参考】
・『角川日本地名大辞典12・千葉」川村優ほか編(角川書店)1984
年(昭和59)
・『日本の山岳標高一覧』(1003)(建設省国土地理院)1991年(平
成3)
・『民間信仰辞典』桜井徳太郎(東京堂出版)1984年(昭和59)
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