▼433号 「大峰山弥山山頂の弁財天池」
【前文】
弥山山頂には小池があって「不浄の者が手を入れると水が涸れると
『大峰七十五靡(なびき)奥駆修行記』にあります。役(えん)ノ
行者がここを開いたとき出来た弁財天の池だという。大雨の中、傘
をさしながら池を探しましたが見つかりません。さすが多雨地帯、
尋常な降り方ではありません。池が出来ても不思議はないなあと思
われるような豪雨に見舞われた弥山でした。
・奈良県天川村、上北山村との境
【本文】は下方にあります。
▼433号 「大峰山弥山山頂の弁財天池」
【本文】
山岳宗教のメッカ・奈良県の大峰山脈は、北は吉野から南の和歌山
県の熊野本宮まで、75ヶ所の山伏礼拝の地があり、七十五靡(なび
き)と呼ばれています。
七十五靡は、熊野本宮から順峰(じゅんぷ・逆は逆峰と呼ぶ)の順
に、(第1)本宮證誠(しょうじょう)殿、(第2)新宮新誠殿、(第
3)那智山飛竜権現、……とつづき、弥山(みせん・1895m)はそ
の第54の霊場で、山頂は樹林に囲まれた平地。
広場にある弥山神社は、北東山麓の坪内集落にある天河弁財天の奥
宮です。「大峰七十五靡奥駈修行記」という書物によれば、山頂に
は小池があって、その昔、役ノ行者が大峰山を開山したとき出現し
た弁財天の池なのだそうです。
その水は、先達が汲んでから参詣した信者が受けるべき霊水だとい
う。もし信者が、勝手に池の水に手を入れたりすると、たちまち水
は干上がってしまうと書かれています。
ある年、熊野から吉野への順峰の道順を歩き弥山を訪れました。八
経ヶ岳から弥山に着いたとたんに土砂降りの雨。そんな中、池を探
しましたが雨の中のせいかとうとう見つかりませんでした。奥宮参
拝もそこそこにテントにもぐり込みました。
テントといってもツエルトテント、中は水浸しでふき取るのに骨が
おれます。雨は一晩中勢いが衰えませんでした。翌朝も篠つく雨。
テントを畳んで飛び出します。
有名な多雨地帯のこのあたり、雨あがりには池が出来ても不思議は
ないなあと、思われるような豪雨に見舞われた弥山でした。自分に
とっては弥山といえば夜の大雨とツエルトテントの中を流れる雨水
のふき取りが思い出されます。
それから小屋へテント設営届けに行く途中でツルリッと滑って見事
にひっくり返ったっけ。怪我がなかった分、儲けものでした。
▼【データ】
【所在地】
・奈良県吉野郡天川村、奈良県吉野郡上北山村との境。近鉄吉野線
下市口駅からバス、天川川合から歩いて6時間30分で弥山。写真測
量による標高点(1895m)と弥山神社、弥山小屋がある。地形図に
山名と神社名、小屋名、標高点の標高の記載あり。
【位置】
・【標高点】緯度経度:緯度経度:北緯34度10分48秒、東経135
度54分34秒(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から
検索)
【地図】
・2万5千分の1地形図「弥山(和歌山)」
【山行】和歌山県南部川村大峰山縦走
・某年9月13日(月・晴れ、夜大雨)大峰山弥山探訪
【参考】
・「大峰七十五靡奥駆修行記」:「山岳宗教史研究叢書・18」(修験道
史料集2)(名著出版)所収
・「古代山岳信仰遺跡の研究」大和久震平著(名著出版)1990年(平
成2)
・「角川日本地名大辞典29・奈良県」永島福太郎ほか編(角川書店)
1990年(平成2)
・「日本歴史地名大系30・奈良県の地名」(平凡社)1981年(昭和56)
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