▼587号 「北ア・蝶ヶ岳の妖精池」
【前文】
井上靖の「氷壁」で有名になった徳沢園から蝶ヶ岳へ向かう長くき
つい長塀尾根。しばらくするとひょっこり池が現れる。樹林に囲ま
れた幽閉な中に水をたたえる妖精池。見事なお花畑の中にふみあと
が無造作に消えている。池をはさんで向かい側で女性がひとり高山
植物の図鑑で花々を調べていた。
・長野県松本市安曇野市との境
▼587号 「北ア・蝶ヶ岳の妖精池」
【本文】
井上靖の小説「氷壁」で有名になった徳沢園は、平らな芝生が生え
た公園のように開け子供たちの声がこだまします。
そこから蝶ヶ岳へ登る長くきつい長塀尾根は木々の間を容赦なく上
に向かっています。徳沢園のにぎやかさがどこへいったかと思われ
るほどの静かさが続きます。
コメツガ、シラビソ、ダケカンバが混生した登山道は傾斜が急で時
々吹いてくる風が楽しみです。
やがて森林限界に近づき倒木帯になってしばらく歩くと、長塀山(2
564.9m)の三角点のある小平地にでます。登山者は決まってここ
で小休止。
これから先は舟窪地形も混じる疎林帯に入ります。しばらくすると
ひょっこりと池が現れます。樹林に囲まれた幽閉な中に水をたたえ
ています。妖精池です。
ザックをおろし、登山道から池に降りていくと見事なお花畑が広が
っています。その中にふみあとが無造作に花々の間に消えています。
池をはさんで向かい側で女性がひとり高山植物の図鑑で花々を調べ
ていました。
▼【データ】
【所在地】
・長野県松本市安曇(旧南安曇郡安曇村)と長野県安曇野市堀金(旧
南安曇郡堀金村)との境。大糸線豊科駅の西16キロ。JR大糸線穂
高駅からタクシー三ツ股下車、さらに歩いて5時間で妖精ノ池。地
形図に池名のみ記載。池より南方向直線約53mに標高点(2615m)
がある。池より北東方向直線約477mに蝶ヶ岳山頂(標高点2677m)、
約572mに蝶ヶ岳ヒュッテがある。
【位置】(国土地理院「電子国土ポータルWebシステム」から検索)
・【妖精ノ池】緯度経度:北緯36度17分04.25秒、東経137度43分19.
25秒
【地図】
・2万5千分の1地形図「穂高岳(高山)」
【参考】
・『信州山岳百科・1』(信濃毎日新聞社編)1983年(昭和58)
・『新日本山岳誌』日本山岳会(ナカニシヤ出版)2005年(平成17)
・「花の神話と詩」石井由紀ほか(ナカザワ)
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